嚢外水晶体摘出(ECCE)

コロナ禍中の受診抑制のつけで、ここ2ヶ月とても忙しい日々です。手術は重症化した症例が多く、時間がかかります。今日は何年かぶりにECCE(Extracapsular cataract extraction、嚢外水晶体摘出)を行いました。超音波で砕けないくらいに硬く成長した白内障です。

 

この方のもう片眼はさすがにPEAが可能と思いますが(来週の予定)、こちらも視力は(0.1)以下に低下しておりましたので、ほぼ両眼の失明状態であり、どうやって生活しておられたのかと思います。

 

ECCEではひとかたまりで水晶体の中身を取りだす関係で、創の大きさは10mm必要です。これだけ大きく開けると、眼圧は瞬間的に0になり、脈絡膜出血を起こすととんでもないことになります(駆逐性出血)。これが最も恐ろしい合併症です。そこで、大きな創であっても、なるべく自己閉鎖ができるよう、トンネルを作ります。創が眼圧上昇に耐えると出血の危険が少なくなります。

 

前嚢切開はCCCでも構いませんが、普段よりもかなり大きくしなければなりません。直径8mmくらいを目指します。水流分離(hydrodissection)の後、シンスキーフックを2本使って核を脱臼させます。あとは、輪匙(りんぴ)で掬(すく)って摘出です。

 

粘弾性物質もふんだんに使って、眼圧を維持し、角膜内皮障害を予防します。点数は同じですが、PEAの普及した今となっては難易度の高い手術です。

 

2019年4月にも同じような内容の記事を書いておりますので、今日のECCEは2年半ぶりということになります。

 

今日は他にも硬い核のPEA、網膜前膜のピーリング(+PEAIOL)、水晶体脱臼のIOL強膜内固定など盛りだくさんでした。多焦点も3例ありました。副院長と手分けして、なんとか予定時間内に終了しました。

 

ST