狙い

昨日の続きです。白内障手術後の視力をどう決定するのか。術後の屈折はどの辺りを狙うのが良いのでしょうか。

 

多焦点IOLを選択した患者さんの場合が最も簡単で、狙いは0D、すなわち遠くにきっちり合わせれば良いです。狙い通りだと、遠くの視力が1.0と裸眼で運転可能なレベルになった上で、近くや中間にもピントが合います(レンズの種類によってピントの合う距離は異なります)。

 

単焦点の場合、患者さんとよく相談してどんな度数を狙うかを決定します。運転、自転車、スポーツ、TV、PC、新聞、家事、裁縫、ミシンがけ、楽器演奏、読経、書道など、その方が最も重視する生活シーンを述べてもらい、その距離に合わせるようにします。

 

運転やTVなど、遠方に合わせた場合は読書用の老眼鏡、PCや裁縫の近方に合わせた場合は、運転やTV用のメガネが必要になることを確認します。

 

80歳以上の高齢になってくると、最も大切なのは自力で日常生活が送れることになってきます。鏡の中の自分の顔がよく見え、食事、炊事、洗濯、入浴ができ、転倒事故を起こしにくい視力です。それは50cm~1mくらいの距離にピントを合わせることにより達成できます。狙いは-1~-2Dの中間距離になります。

 

「なるべくメガネはしたくない」とのご希望が強い患者さんでは、左右の屈折度数に多少の差をわざとつける方法をとることもあります。これをモノビジョンと言います。その場合でも左右差はせいぜい1Dくらいにとどめるべきです。

 

白内障手術で最も大切なのは適切な狙いを決めることです。そのためには、術前の患者さんとのコミュニケーションが欠かせません。

 

ST