白内障手術における術後屈折値の狙い

白内障手術ではいろんな度数の眼内レンズを用いますが、これはメガネ合わせと同じようなものです。レンズの度数により、術後の屈折値が決まります。実際は、術後の屈折値の狙いをつけて、術前に測定した眼の形から度数を決定します。

 

ではどのくらいの屈折値に狙いをつけると良いのでしょうか。例えば単焦点レンズで狙いを正視(メガネ度数=0)にした場合、5m先の視力票では最高視力が期待できますから、運動や散歩には最適ですが、近くの30cmはピントが合いませんので老眼鏡が必要です。

 

狙いを軽い近視の-3Dにしますと、目の前30cmくらいにピントが合いますので読書には最適ですが、車の運転時はメガネが必要です。

 

日常生活で最も大切な洗顔、入浴、食事、炊事、洗濯、掃除などは50cm~1mの範囲ですので、狙いは-1.5Dとなります。これは中間距離であり、最もお勧めの狙いです。PCも裸眼でこなせるし、ほとんどのシーンでメガネが不要です。

 

個々の患者さんで事情は異なりますので、日常生活習慣をよくお尋ねした上で、慎重に狙いを決定します。

 

狙いを決めることと、そのための正確なレンズ度数を選択することが、白内障手術で最も大切です。

 

一方、多焦点レンズでは遠、(中)、近とピントが分かれていますので、狙いは必ず正視にいたします。度数が正確に選択できれば運転から読書まで裸眼でこなせるようになります。

 

しかしいずれにせよ、誤差(狙った度数と実際の度数の差=度数ズレ)を0にすることはできません。術後の屈折異常はタッチアップレーシックで治療が可能です。狙いが正視でない場合、多少のズレは問題ありません。

 

術前に遠視や高度近視がある方の場合でも、術後の屈折は0~ー3Dの範囲にいたします。裸眼での生活をしやすくすることにより、高齢になってもQOL(生活の質)が確保され、健康寿命を伸ばせます。

 

ST