IOLの入れ替え手術

今日はIOLの入れ替え手術がありました。経年変化で濁ったIOLを摘出し、新たなIOLを強膜内固定する手術です。この手術では山が二つあります。IOLの摘出と挿入です。

 

摘出では、なるべく小さな自己閉鎖創から周りの濁りを含めて取り出すのがポイントです。また、強膜よりも角膜切開の方が、余計な操作が少なく、術後がきれいという利点があります。そこで便利なのが、名古屋の市川一夫先生が開発された弧状ブレードです。これを使えば、2.5~3.4mm幅の角膜切開創が確実に自己閉鎖しますので安全です。

 

IOLは特殊なハサミを用いて3分割します。嚢内固定されたIOLは嚢ごと分割し、周りの混濁(水晶体皮質)もできるだけ一緒に摘出します。混濁が硝子体腔に残ると、掃除にとても時間がかかります。

 

硝子体を切除した後、IOL挿入はYamane法で行います。横浜の山根真先生が考案された方法で、30G針を2本用いてIOLの足(ループ)を眼外に誘導し、足の先にコブを作って安定させます。結膜が温存でき、慣れてくるととても簡単で術後もきれいです。

 

Yamane法は良さが広く認められて、世界的に普及しつつあります。縫合固定、他の強膜内固定に比べ、手術が容易であるのみならず、IOLの安定にも優れています。それは足の先にコブを作って再び眼内に落下しないようにするからです。Yamane法の後ならば、網膜剥離の手術にも対応できます。

 

後からなら誰でも真似できますが、最初に行い、開発する際にはいろんな工夫、アイデアが必要だったことでしょう。開発者の山根先生には敬服するばかりです。

 

初回の白内障手術のあと長期間が経過したIOLは嚢としっかり癒着しており、チン氏帯が緩んでいることも多く、摘出交換は不可能ではないにしてもとても敷居の高いものでした。しかし、日本人医師の貢献を含む術式の進歩により、安全に行えるようになってきています。素晴らしいことです。

 

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