脱臼水晶体の手術

先週もたくさんの手術を行いましたが、中でもご高齢の患者さんの脱臼水晶体を摘出し、眼内レンズを強膜内固定した1例はハイライトでした。

あちこちで手術を断られ、半分諦めていたとのこと。

脱臼水晶体といってもいろんな程度があります。チン氏帯部分断裂くらいならそのままIOLを挿入できることも多いですし、水晶体核が柔らかかったらなおさら簡単です。しかし、硬い水晶体が完全に脱臼していると通常の方法ではお手上げで、硝子体手術が必要になってきます。

硝子体中の硬い水晶体は硝子体カッターではかじることができません。カッターで嚢をかじった後、白内障手術で使う超音波チップを硝子体腔に差し込み、吸引しながら超音波をかけ、砕いて除去します。昔からフラグマトームと言われる方法です。

コンステレーションの横振動チップは水晶体をあまり弾きませんので、フラグマトームとしても優秀です。

実は超音波白内障手術が始まったばかりの頃、硝子体の専門家は好んでこの方法で水晶体摘出をしていたものです。pars plana lentectomy (PPL)と言って、昔の教科書ならば載っていることでしょう。しかし、その後、水晶体摘出は角膜輪部から行う方法が普及しましたので、硝子体術者といえども、今やPPLを行う機会はあまりありません。

完全脱臼水晶体でのみ必要となる技術です。

IOLの強膜内固定にも色々なバリエーションがあります。今回は、30Gの注射針で誘導することにより経結膜的に足を固定する方法でした。

強膜内固定は縫合による固定よりも安全です。よりclosed eye surgery(眼圧を一定に保ったままで手術すること)に近いからです。

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