MIGS(ミグス)

寒い時期になると、眼圧が高い人が多くなります。緑内障で通院している患者さんが、いつになく高い値でびっくりすることもあります。点眼薬を複数使用しているにもかかわらず、眼圧が30mmHg以上にもなるともう手術を考慮するしかありません。

緑内障手術の切り札とも定番とも言えるのが、濾過手術(トラベクレクトミー)です。眼内液を前房から結膜下へと流す道を作る手術で、眼圧下降効果が高いので最も広く行われています。

但し、術後、白目(結膜)に「コブ」(濾過胞)が出来ますし、その部分から感染することも稀ながらありますので、気軽に行える手術ではありません。効果は抜群ながら副作用も多いということです。

そこで最近注目されているのがMIGS(Minimally Invasive Glaucoma Surgery、最小侵襲緑内障手術)です。これは白内障手術の際の耳側角膜切開からアプローチするのが特徴の一つで、白内障手術と同時に行えば新たな切開を加える必要がありません。患者さんに優しい手術です。

「手術」と聞くと誰でもぎくっとしますが、「白内障手術のついでに出来ます」となると、敷居がぐんと低くなるでしょう。

隅角へ直接アプローチしてトラベクルムの組織を切開または切除します。これにより、房水が出て行く部分の抵抗が減り、眼圧が下がるという訳です。眼内から行うトラベクロトミーです(trabeculotomy ab interno)。

切開(または切除)の方法は、谷戸式トラベクロトームや森式切開糸もありますが、昨年導入されたカフーク使い捨てブレードは使いやすい上、効果も確実とされていますので有望です。

隅角を観察しながら操作するため、ゴニオレンズ(隅角鏡)が必要です。モリゴニオレンズは顕微鏡をそのままで使える良さがありますが、解像力は顕微鏡を傾けなければならない直像式(Hill's Easy Access Surgical Gonio Lens) が優れています。

白内障手術をする機会は誰にとっても一生に一度しかありません。緑内障の患者さんが白内障手術を受ける機会があれば、それを大切にしたいものです。

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