ベーレンライター版ベートーベンピアノソナタ全曲楽譜

オーセンティックな楽譜の雄、ベーレンライター社から待望のベートーベンピアノソナタ全集が出ました。全3巻に作品番号付きのソナタ32曲と少年時代の選帝侯ソナタ3曲を加えた、全35曲が勢揃いしています。

 

今まで、個々に何曲かピースで出ており、そのうちいくつかはすでに持っています。内容についてこのブログで書いたこともありました。しかし、全曲を一度に眺めることが出来るのはまた違った感動があります。

 

ベーレンライター版は原典版の究極であり、ベートーベンが書いた(構想した)通りを出来るだけ忠実に再現することを旨としています。他の解釈版にあるような親切な運指やフレージング、ペダル記号、トリルの展開などが少ないです。とはいえ、ベートーベンが書いたもののみちゃんと出ています。

 

運指については、例えばソナタ1番の3楽章中間部での4度の進行。ここはかなり手こずるところですが、ベートーベンの運指通りに弾くとうまく弾けるのです。

 

右ペダルにしてもベートーベンが必要と考えた部分のみちゃんと記載されていますので、絶対に外せません。ワルトシュタインソナタの終楽章冒頭やテンペスト1楽章のレシタティーボなど。これ以外の多くの部分でも、自分で考えて適切に踏まなければなりませんが。

 

ペダル、フレーズ、ブレスについて、最も親切に徹底している解釈版は伊リコルディ社版(カゼッラ校訂)ですが、あと、全音(クラクストン)、伊クルチ(シュナーベル)、ブライトコップフ(ラモンド)、ペータース(アラウ)、ヘンレ(ハンゼン)の順でより原典版に近くなってゆきます。

 

注目すべきは全音から出ているリスト版で、内容的に初版の複製であり、原典版に近いものとなっています。

 

現代の音楽シーンでベートーベンのピアノソナタを取り上げる際には、ベーレンライター版が標準となることは間違いありません。

 

しかし実際には、この楽譜だけではうまく行かないことも多いので、カゼッラやクラクストンとの併用が必要になってくるでしょう。

 

全32曲とも何度も弾いていますが、特に好きなのは、1、4、8、12、13、14、17、21、23です。

 

毎日違う曲を弾いても1カ月かかるので、永遠に飽きることはありません。

 

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