ペダル

グランドピアノには普通2または3本のペダルがついています。3本の場合、右がダンパーペダル、中央がソステヌートペダル、左がソフトペダルといわれます。このうち、最もよく使い、単にペダルと言えば、右のダンパーペダルのことです。

ダンパーとは消音器のことで、ピアノの弦の振動を止める働きをします。ピアノのキーを押すと、ダンパーが外れると同時にハンマーで弦が打たれます。キーを離すと、ダンパーが元に戻り、音が消えます。そんな複雑な動き(アクション)でピアノの一音一音が出来ているのですが、右ペダルを踏むと全88音のうち高音を除いた68音のダンパーが一気に外されるのです。最高音の20鍵にはもともとダンパーがありません。

ペダルを踏むとキーから手を離しても音が消えません。また、打鍵した弦以外の倍音成分の弦が共鳴して振動します。更には、鍵盤のタッチが軽くなります。ダンパーは足で動かされ外れているので、アクションが軽くなるからです。

ペダルのない音は純粋でくっきりしています。ペダルを踏むと、倍音によりより滑らかかつ広がりのある音になります。より強い音も出せます。逆により軽やかかつ弱い音も出せます。

人間の声を模した伸びと強弱のある音をピアノで表現するためには、右ペダルが欠かせません。また、ショパン やリストの速くて華麗な音列も、右ペダルの助けにより弾きやすくなります。逆に、右ペダルが18世紀後半に考案されたからこそ、ベートーベン以降の華麗なピアノ技巧(音の跳躍やアルペジオなど)が開発されたとも考えられます。

ピアノを上手に弾くためには、ペダルの機能を理解して、上手に使いこなす必要があります。バッハやスカルラッティなど、ピアノが出来る前の鍵盤曲でも、ピアノで弾く以上はペダルを使うべきです。ペダルなしの乾いた音では、チェンバロにすら負けてしまいます。

もちろん、ペダルを踏みっぱなしでは音が混濁してしまい聞くに耐えません。アクセント、和声の変化、表情によりこまめに踏み替えます。ペダルによる音の混濁をわざと利用する作曲家もあります。例えばベートーベンのハンマークラビアソナタ(29番)の冒頭など。

ペダルの勉強をするには、近、現代の曲で、作曲家によるペダル指示のあるものから始めると良いです。古典〜ロマン派の「原典版」楽譜はペダル指示がない場合が多いので注意が必要です。バッハならブゾーニ版、ベートーベンならカゼッラ版、ショパン ならコルトー版など、校訂者による完全なペダル指示がある楽譜が最も参考になります。

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