球面収差

球面のレンズで光を集光させると、一点に集中せず芯がばらけます。これを球面収差と言います。収差はピンボケの原因になります。

 

人間の角膜は通常中央(極)よりも周辺(赤道部)が大きな曲率になっている非球面レンズです。これをoblateと言い、正の球面収差を有します。

 

LASIKやRKで角膜中央部を更に偏平化させるとピントの位置が遠くになり、近視の治療に有効ですが、その場合、角膜形はよりoblateになり、正の球面収差が増大します。

 

逆に、遠視LASIKで角膜の周辺を削り、中央を相対的に隆起させますと、形としてoblate の反対のprolateになり、ピントの位置が前に来るので遠視の矯正ができます。この時、負の球面収差が増大します。

 

若い正常の角膜では球面収差が0.3くらいの値で、水晶体が逆に-0.2くらいですので、打ち消しあって収差が少なくなっています。

 

単焦点眼内レンズのテクニスオプティブルーは-0.2くらいの収差を持つ非球面レンズですので、若い人のように収差のない状態を目指していることがわかります。

 

ただし、症例によってはもともとの角膜収差がマイナスの場合もあり、そんな時はこのレンズだと収差が逆に増えるということになります。

 

当院では白内障手術の患者さんの球面収差を測定しており、眼内レンズの適合性も検討しています。

 

ミニウェルレディという多焦点眼内レンズは、中央が正の球面収差(oblate)、中間部が負の球面収差(prolate)を有する屈折型レンズで、収差によりピントの位置を前後にずらし、焦点深度を得ているようです。中央が遠用、中間部が近用部分です。最周辺部は収差がない設計だそうです。

 

眼内レンズによって、球面収差を補正するものであったり、増加させるものであったりと、設計者の苦労がしのばれます。

 

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