エクスプレス

今年に入って、緑内障手術をたくさん行なっています。月に2〜3例ですので「多い」というほどではありませんが、昨年1年で10件だったことを思えば、顕著な増加です。

全てMMC併用トラベクレクトミーで、9割以上は専用のデバイス、エクスプレスも用いています。エクスプレスが保険収載されて以来、トラベクレクトミーがより安全かつ安定した成績(眼圧下降効果)を出せるようになりました。

緑内障は点眼薬のみで8割方コントロールできます。コントロールとは視神経の萎縮が進行しないということです。しかし、見かけ上の眼圧が低くても、進行してしまう例が時々あります。そんな時、手術の適応ということになりますが、手術では10mmHg➕まで眼圧を下げなければ値打ちがありませんので、ロトミー(線維柱帯切除)ではなくレクトミー(濾過手術)が必要となってくるのです。

しかし、エクスプレスを使うにもコツがあり、一夜にして安定した成績が出せるわけではありません。手術時のみならず、術後経過においても慎重な取り組みが必要となってきます。

昔は手の施しようがなかった血管新生緑内障(Rubeosis Glaucoma ルベグラ)も、抗VEGF薬注射とエクスプレスによるトラベクレクトミーにより治療が可能です。エクスプレスにより虹彩切除を省略できますので、虹彩に新生血管が生えていても、安全に手術ができるのです。

緑内障の分野は点眼薬の影に隠れて、手術の進歩が遅々として進まない感がありましたが、最近はそうでもありません。より安全で侵襲の少ない方法が次々と考案されつつあります。

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