バッハの平均律ピアノ曲集

弾いて楽しいバッハの平均律曲集は、ピアニストにとって旧約聖書と呼ばれています。ちなみに新約聖書とはベートーベンの32曲のピアノソナタのことです。

これらの曲集のうち、より現代にマッチするのは多分バッハでしょう。というのも、一曲が5分くらいと短く、長調短調が交互に来ますので、あきませんし、曲自体の美しさも見事だからです。ベートーベンももちろん立派な曲集ですが、現代の基準からすれば長過ぎますし、ソナタ形式というのがちょっとくどい感じもします。

なにか、偉い人の説教を聞かされているようで、その点、バッハは違います。バッハの時代、音楽は教会のためのもので、市民のための実用を旨としていました。ベートーベンは貴族のパトロンからお金を得ることがモチベーションでしたから(特に初期)、なんとなく雰囲気が違うのです。

平均律をCDで聴くとすれば、世評が高いのはグールドとリヒテルです。前者は第1巻の24曲は素晴らしいのですが、後の24曲が無機的で好きになれない演奏です。リヒテルは立派ながら、なんとなく田舎臭い感じがただよいます。

より新しいアシュケナージの演奏、あるいは(アンドラーシュ)シフの演奏のほうがおすすめです。また、全曲ではありませんが、(ウィルヘルム)ケンプの演奏もとても美しいです。

アシュケナージといえば、だいぶ以前から指揮者になってしまい、ピアノの公開演奏は長らく行っていないとのことですが、来年の春、大阪で息子のヴォフカさんとの連弾の演奏会があります。ここでは、シューベルトハンガリー風ディベルティメントやストラヴィンスキーの「春の祭典」が予定されており、楽しみです。

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