ベートーベンカレンダー

ある日なにげなくカレンダーを眺めていますと、1ヶ月の31日がベートーベンのピアノソナタの数(32曲)に近いことに気づきました。一日から一曲ずつ聴いたとすると、31日には31番にたどりつきます(あたりまえです)。32番は余りますので、31日に2曲聴くことにしましょう。毎日毎日ベートーベン三昧、考えただけでも楽しいですね!?

ヘ短調で嵐のような終楽章の1番、とても優雅な2番、明るくて威勢の良い3番、雄大な4番、と、1番から順番に聴いても決して飽きることがありません。これらの曲は月が改まった新鮮な感じにぴったりです。

最初の山は7〜8番にあります。ちょうど1週間目あたりになります。8番は悲愴ソナタとして有名で、2楽章から終楽章にかけての美しさが際立っています。

12番(葬送)、13番(幻想)、14番(月光)、15番(田園)と名作が続いた後、作品31の3曲となり、またまたピークが訪れます。ちょうど月の半ばにさしかかり、仕事もはかどってくる時期ですね。17番の終楽章がとても美しい。18番の3楽章も素晴らしいです。

19、20と一息はいったあと、10日単位だと3巡目にはいる21番が、これまた大名作のワルトシュタインソナタとなってます。ここまでくると、自分の仕事そっちのけで、曲に集中したくなってしまいます。続く22番、23番も力強さでは負けていません。特に23番(熱情)の終楽章は、いつ弾(聴)いてもワクワクしますね。出だしのppから最後のコーダまで、息つく暇もありません。

3楽章の出だしを聴こえるか聴こえないかのppで弾くのは難しく、なかなか成功している演奏は少ないです。ポリーニリヒテルはその点、失格ですね。アレグロ マノントロッポにしてはテンポが速すぎて、単調になってしまっています。

月末になってくると、仕事も仕上げに入るといいますか、締めが来てしまいます。なんとか帳尻を合わさなければなりません。27、28日ごろはしっちゃかめっちゃかになっていることも多いのですが、そんな気分にぴったりの曲とまたなっているのです。ソナタ27番、28番です。28番の2楽章が支離滅裂です。

最後の大花火が29日に来ます。40分以上かかる大作で、雄大に開始され、終楽章のフーガまで山あり谷あり、まるで、人生の縮図を見るようです。この曲のような一ヶ月だと、大豊作ということになるでしょう。

30日を過ぎると、大方の仕事は終えて、回想に入ったり、あるいは次の月に備えるというところでしょう。そんな気分にぴったりなのがまた、最後の3曲のソナタです。

ベートーベンがこのような聴き方を想定した可能性はゼロですが、一度試みられることをお勧めしたいです。

全集の推薦盤はケンプの新、旧(モノラルおよびステレオ、独DG)およびアラウの旧盤(蘭フィリップスのデジタルでないほう)です。楽譜の再現という点では後者が上ですが、ベートーベンの精神の表現という点では、ケンプにかなう演奏家はいません。

ST