ピアノ音楽が趣味なので、ピアノのLPやCDは昔からよく聴いてきました。小生が中高生の頃から、世界で最も有名だったピアニストの一人がリヒテル(Sviatosrav Richter、1915-97)。1960年はじめに「幻のピアニスト」として西側デビューし、カラヤンと共演したチャイコフスキーのピアノ協奏曲1番やポーランドで録音したラフマニノフの2番の協奏曲などがLPでベストセラーになりました。
日本に初めて登場したのは大阪万博の頃の1970年。当時大学生だった小生はもちろん、フェスティバルホールへ聴きに行きましたよ。
曲目はシューベルトのソナタ19番ハ短調やプロコフィエフのソナタ7番など。すごい技術と感心したものの、ライブならではの感興は今一つで、ちょっと前に聴いたルービンシュタイン(Artur Rubinstein, 1887-1982)やケンプ(Wilhelm Kempff, 1895-1991)に比べると、聴き劣りがしました。
その後何度もライブの機会がありましたが、晩年になる程さらにおとなしい演奏になってきたようで、ずーっと「評価の割には・・・」と思っていたのでした。
しかし、西側にいち早く出てきたアシュケナージが「自分よりもギレリスよりももっともっとすごいピアニストがリヒテル」と紹介していたので、西側に出る前はもっとすごかったのかもと想像していたのでした。
最近になって、リヒテルのソ連時代のライブ録音が大量に出てきました。Profilというレーベルから出ている例えば「リスト、ショパン集」を聴いてみると
そのあまりの凄さに絶句。リストの超絶技巧練習曲の「鬼火」や「狩」、二つの練習曲から「小人の踊り」、メフィストワルツ1番など、定番のショーピースを激烈な速さで弾ききっています。これがライブとは信じられません。あるいはライブならではのリスクを取って成功しているからこそこちらも興奮するのでしょうか。
リヒテルは西側へ出てきて随分変わったようです。40代の壮年期は、まさに「現代のリスト」の形容に相応しい偉大な存在でした。
同じシリーズでは「ベートーヴェン集」「シューベルト集」「シューマン、ブラームス集」「ラフマニノフ、プロコフィエフ集」なども出ていますが、すでにかなり入手困難になっているようです。
ST