眼内レンズの強膜内固定

今年の春頃から始めた手術に、眼内レンズの強膜内固定という方法があります。普通の白内障手術では水晶体の中身を吸い出して、袋の中にIOLを入れます。しかし、中にはその袋がなかったり、あるいは、はずれていたりと、IOLの固定が出来ない症例があります。

嚢が無い場合、従来はIOLの縫い着けを行っていました。ところが、この方法では、術後に縫い着けた糸が残りますので、あとから出て来て刺激となったり、感染の原因となることがあります。また、方法としてかなり複雑で、有能な手術助手が必要です。

しかし、ここ数年、糸を縫い着けること無く、IOLの足の部分を強膜の中に通し、そのままにしておいたり、糊でくっつけたりといった方法が報告されるようになってきました。縫合糸が残らないこと、術式がシンプルなことから、いつかはこの方法にチェンジしようと思っておりました。

5月以降、4〜5例に行いました。方法にはいくつかのバリエーションがあり、それぞれ試してみましたが、それなりに長所短所があり、まだ確定してはおりません。しかし、手術の結果はとてもすぐれたものであることが分かりました。

糸による固定では、固定位置が二カ所の点になるのに対し、強膜内固定では線になります。また、固定位置をあらかじめ決めておけます。結果、眼内レンズの位置が素晴らしく安定するのです。通常の嚢内固定に勝るとも劣らない固定と言えます。

一番最近では、多焦点IOL(リストア)を強膜内固定し、すぐれた結果を得ることが出来ました。このレンズで遠く、近くの視力がきちんと出せるということは、中心固定が良好なばかりか、前後の固定位置も嚢内固定とほぼ同じということになります。

水晶体脱臼、亜脱臼、無水晶体眼などの眼内レンズ挿入でも、通常の嚢内固定と遜色のない、すぐれた結果を残せる、非常によい方法だと思います。Good bye 縫合固定!Good bye CTR for ever!


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