日帰り硝子体手術

当院では19年前の開業時以来、日帰りの硝子体、網膜手術を実践してきました。これは、実は非常に珍しく、時代に先駆けた試みだったのですが、先の臨床眼科学会では、日帰りで硝子体手術をする施設がぼちぼちと増えてきていることがわかりました。といいますのも、「日帰り硝子体手術」という教育コースが企画されていたからです。

海外では、硝子体手術を日帰りで行うのはあたりまえで、そもそも医療保険が入院手術を認めていません。上記コースで東京のT先生がおっしゃっていたように、同じ手術を行っても、日帰りと入院では前者が約2/3の費用で行えます。海外のような民間の医療保険ならば、日帰りで行えるものを入院で認めることはありえないのです。

日本の公的保険では、効率性よりも他の要素に多く影響されているからか、日帰りでも十分行える医療行為であっても、入院させることを禁じることはあまりありません。しかし、医療に割り当てられる予算が限られているのは日本でも海外でも同じですから、いつかはこのような非効率を改善しようとの声があがってくることでしょう。

白内障手術では術後の生活制限があまりありませんが、硝子体手術で、特にガスを注入した場合、「うつぶせで寝る」という、体位の管理が必要となります。これは自分でももちろん出来ることですが、入院だと就寝時も看護師に見張られているので、より正確に行えるであろうことは当然予想されます。

あと、バックリング手術(眼球の外側にシリコンスポンジを縫い付ける手術)では、術後数日、かなりの痛みを伴います。日帰り手術では痛みの管理が入院にくらべ不十分になる可能性は否めません。

しかし、これらの点を問題としなければ、全ての網膜硝子体疾患を日帰り手術で行うことができます。それは海外や当院における実績が証明することです。

ここ数年に普及した経結膜極小切開硝子体手術は、より安全に、また、より痛みが少なくなっています。日帰りに適した術式です。極小切開手術の普及により、日帰り硝子体手術も徐々に普及していくと思われます。


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