硝子体手術今昔

昨日は糖尿病性硝子体出血に対する硝子体手術を行ないました。増殖性糖尿病網膜症により硝子体内に大きな出血を来たし、失明状態になった患者さんの手術です。

昭和50年代、硝子体手術の黎明期に真っ先に適応とされた疾患です。しかし、当時と今とでは安全性、結果に雲泥の差があり、医療の進歩を感じずにはおれません。

あのころは、まず10中8〜9、視力回復が得られませんでした。合併症として網膜剥離、水晶体混濁、炎症などが頻発し、主治医としてとてもつらい思いをしたものです。最後はルベグラ(血管新生緑内障)で失明というのも多かったです。

手術時間も3時間くらいは普通でした。最初は全身麻酔で行なっていたものです。

ところが、今では、網膜を破ることはまずあり得ず、周辺部まできれいに硝子体混濁をとっても水晶体を温存でき、時間も大幅に短縮されました。これならば日帰り手術でも問題ありません。

カッターが細く、切れが良くなったこと、広角観察装置、シャンデリア照明、無縫合手術などのおかげです。

硝子体手術の適応は限りなく拡大しつつありますが、糖尿病性硝子体出血は今なお、もっとも手術の価値が高い疾患のひとつです。

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