初RRD手術の思い出

先週は夏休みで定期手術をお休みしましたが、金曜日に網膜剥離の緊急手術を行いました。また、昨日も網膜剥離の手術を行いました。今月に入って3例目です。

私が眼科医になって初めて執刀した手術が網膜剥離手術でした。もちろん最初から終わりまで執刀医として行う、いわゆる「完投」という意味です。医者になって4年目、1978年のことです。それだけに、網膜剥離には今でも大きな思い入れがあります。

当時でも、研修明けの最初の手術は白内障手術が普通でした。(眼内レンズはなく、嚢内摘出手術でしたが。)ところが、勤務していた大学病院で網膜の術者が少なく、オーベンのS先生が夏休み中だったため、O教授に突然、「キミがやってみるか?」と言っていただいたのです。「えっ、白内障もまだなのに!」と心で叫びました。その患者さんのことは今でもありありと覚えています。

バックリング+クライオという、今でも行われている方法です。しかし、その時、まだ排液を独りで行ったことがなかったため、「排液は出来ないが、なんとかバックルの位置を決めれば、自然に治るだろうし、少なくとも悪くなることはない」との見込みで行いました。

入院ベッドで1日絶対安静を取らせ、翌日、教授回診がありました。「おっ、なんとかいけとるみたいやで」と言われたので、自分でも診察してみると、くっきりとバックルのラインが見え、網膜下液は消失していました。その時の感動はとても忘れることができません。

「なぜこんなにきれいに治るのだろう?」という疑問が、その後の研究テーマになったりもしました。

あれから33年、術式もいろいろと変遷しましたが、バックル手術は未だに現役です。オーベンのS先生は昨年若くして鬼籍に入られました・・・。

ただ、硝子体剥離と弁状裂孔にともなう胞状剥離は、硝子体手術のほうがはるかに良いと実感しています。これは30年前にはなかった考えです。

最近出た文献で、網膜剥離に対して硝子体手術を行う場合、バックルの有る無しで予後は変わらないとの報告があります。それならばより侵襲の少ない、硝子体手術単独のほうがはるかにすぐれていることになるでしょう。半ば儀式的に行っていた輪状締結も最近はほとんど行いません。


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