Opus 53

作品53といえば、なぜか名作ぞろいで、たとえばショパンの作品53は有名な「英雄ポロネーズ」ですし、ブラームスでは「アルトラプソディ」となっております。シューベルトは生前出版された数少ないソナタのひとつ「ニ長調」の巨大なソナタです。

しかし、なかでもとびきりの名作がベートーベン作曲のピアノソナタ「ワルトシュタイン作品53」ではないでしょうか。ピアノならではの技巧的要素を駆使している点でも当時としては空前のものだったでしょう。

特に終楽章のコーダにおけるオクターブ・グリッサンドが目を惹きます。これは手が最低10度が届く大きさでないと無理で、また、ピアノも軽いタッチのものでないと困難です。

現代のスタインウェイに代表される重いキーのピアノでは演奏至難であり、グリッサンドを回避する弾き方もいろいろと提案されています。

有名どころでは、ホロビッツルービンシュタインバックハウスアシュケナージなどが、グリッサンドを回避しています。しかし、現代の演奏シーンにおいて、この部分をグリッサンドで弾かないくらいなら、多分、この曲を取り上げることはできないでしょう。

リヒテルは生涯にわたってこの曲を弾いていません。オクターブ・グリッサンドを習得できなかったから?と邪推しています。

ケンプ、アラウ、ゼルキンポリーニなどで聴くグリッサンドの効果を一度耳にしてしまうと、他の(安易な)代替え法は聴く気がしなくなりますから・・・。


衣装持ちのはるちゃんは新しい服が大好きです。

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