抗凝固(血小板)薬

眼科医会の会員誌である「日本の眼科」の最近の号で、M先生が眼科手術の際の抗凝固(血小板)薬について書かれています。

別の海外の論文によると、白内障手術の際には抗凝固剤を中止する必要がなかったということでしたが、M先生によると、当該論文のサンプル数が少ないので、万が一の場合の駆逐性(脈絡膜)出血が心配であるということです。

サンプル500でどうもなかったとしても、10000例の場合、もし駆逐性出血が起こったとすると、抗凝固薬の投与が致命傷になるかもしれないとの危惧です。M先生は、危険症例(緑内障、高度近視、抗癌剤投与など)では抗凝固薬を中止すると言明されています。

ただ、抗凝固薬は、脳循環障害や心筋梗塞の既往例の他、バイパス手術の後などでは、止めることが即全身合併症の危険とつながります。念のために投与しているのか、必要に迫られて投与しているのかでは違います。

理性的に考えれば、眼科手術の危険性と抗凝固薬中止の危険性を天秤にかけることになります。

しかし、これもかなりむつかしいことです。内科には内科の、眼科には眼科の主張があり、平行線をたどることが予想されます。

そんな中で、「抗凝固薬の中止は必要ない」との論文が出たことは、まことに歓迎すべきことと考えています。

当院では、何年も前より、白内障手術の際の抗凝固薬中止を行っておりません。また、眼瞼手術においても行いませんし、緑内障手術も同様です。硝子体手術とて、なるべく中止せずに行うようにしています。

DMの硝子体手術の際は、術後出血が長引くので抗凝固薬中止が望ましいと思います。

最近、抗凝固薬を飲んでおられる患者さんはとても多いです。患者さんのQOLを考え、抗凝固薬に限らず、他科による投薬はなるべくそのままで手術を行うように心がけています。


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