日帰り手術

きょうは珍しくお昼からの手術がありませんでした。

基本的に私院長は午後の外来には出ておりません。外来は担当医にまかせて、手術をしているのですが、手術が予定されていない時はお休みになるかというと、そういうわけにもまいりません。手術、外来以外にもいろいろと用事があります。

「先生は手術だけして、いいですねぇ」とか、会合で会う先生方にうらやましがられることがありますが、大いなる誤解です!

本日送られてきた「日本の眼科」を見ると、東京の竹内忍先生のところではたくさんの網膜硝子体手術を日帰りでなさっています。年間にすると400例くらいのようです。

中で、「網膜剥離はなるべくバックルで」と書かれていました。これは、当ブログでも書いた記憶がありますが、術後に腹臥位をとりにくい日帰り手術では当然のことです。

「海外では網膜硝子体手術はほぼすべて日帰りで行われる」とも書かれていました。もちろん、白内障手術もすべて日帰りということです。

日帰りというと、入院設備がないから仕方なく〜、と思っておられる方がいらっしゃるとすれば、それは誤りです。入院と日帰りを比較すると、後者のほうが手術成績が良いのです。まあ、学問的にスキのない研究は多分むつかしいでしょうが、いくつかの報告がそれを示しています。

竹内先生もご報告の中で、「日帰り(網膜硝子体)手術の有効性が明らかになった」と述べておられます。

入院よりも日帰りが良いというのは多分、高年齢の方において、環境の変化の影響が無視できないからだと思っています。

認知症の方の手術も同じ雑誌に取り上げられていました。小生に言わせれば、ここでも日帰り手術の良さが発揮されます。

ただし、そのためには、医師のみならず、すべての医療スタッフが眼科疾患の手術加療についての深い知識を持っていることが条件です。受付、待合室、手術待合、手術室、処置室などなどの、あらゆる空間で、患者の不安を取り除くことができなければなりません。場合によっては、家族の人にも手術室に入っていただき、手を握る等の配慮が必要になります。

病院のベッドでは、夜間の人手不足が問題となります。50名の入院患者中、何名もが認知症で徘徊されるとなると、2,3名の看護スタッフで管理が行き届くはずもありません。認知症の方が徘徊されるのは、病院という不慣れな環境が原因であり、日常生活の変化をなるべく避けるというのが鉄則であるのは、申し上げるまでもありません。

当院では今まで、認知症を理由として(日帰り)白内障手術をお断りしたことはありません。


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