多焦点IOLの選び方

先進医療保険が使えることで認知度が一気に高まり、最近は白内障手術の患者様のうちかなりの割合で多焦点IOLをご希望されます。しかも、大抵、ネットなどで多焦点のことを勉強されてますので、「〜のレンズはどうですか」などと、ご指定される場合もございます。しかし、大抵はこちらの思いとは異なっております。。

 

特に、最近日本で認可された3焦点レンズが人気で、「遠方、近く40cm、中間60cmが見える」との謳い文句には、誰しも惹かれることと思います。眼科医の中でも「画期的」との意見があるくらいです。

 

どのIOLを選ぶかは、光学特性(性能)をよく理解した上で行わなければなりません。単焦点、EDOF(焦点深度拡張型)、2焦点、3焦点とあるうち、最も像がシャープなのは単焦点レンズです。一般的に、フォーカスを広げれば広げるほど、コントラスト感度は低下し、像がボケることで生じるハロ、グレア現象がひどくなります。

 

EDOFは遠方にピントが合うと近く60cmくらいまでシャープに見え、それより以内はボケます。細かい字を見るには老眼鏡が必要なことが多いです。その代わり、単焦点に匹敵するコントラスト感度が得られます。ハロはそれなりにあります。

 

このレンズをもともと遠視の方に使用すると、手術により得られることが多く、失うことはあまりありません。しかし、もともと近視の方では、近くが見えにくくなるという欠点が目についてしまいます。術前からの近視は、2焦点、3焦点で近くがきっちり見える多焦点が適しています。

 

夜の運転では、多焦点のハロが最も気になるシーンです。そもそも運転しない人ならともかく、夜間の運転を重視する場合、単焦点の方が無難です。

 

緑内障黄斑変性など、視機能に影響する眼底疾患がある場合、多焦点はお薦めしません。

 

結局、多焦点IOLがご希望の場合、眼底疾患の有無、屈折状態、角膜乱視、年齢、性別、運転の有無、お仕事、趣味などの情報から、その人に合った最適の1枚を選択します。

 

最終的に単焦点IOLをお勧めすることもまた多いのです。

 

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