4月以降の多焦点レンズ

前にも書きましたように、2020年4月以降、多焦点レンズは差額ベッドや大病院の紹介状なし受診のように「選定療養」となり、保険収載されると供に、特別の自己負担が発生するようになります。

 

これはいわゆる混合診療で、健康保険と自費診療の混合です。海外では普通に行われている制度ですが、国民皆保険の日本ではごく例外的に認められるに過ぎません。今回の多焦点レンズで11番目だそうです。

 

選定療養になるのは、従来から国内で認可され、先進医療として評価の対象となっていたレンズで、テクニスマルチ、シンフォニー、パンオプティックスなどです。海外から取り寄せのミニウェル 、ファインビジョン、レイナーなどは今後も完全自費診療となります。

 

患者さんの自己負担金は、各医療機関が独自に設定できますが、届け出が必要であり、行政が定めた方法に則って算出します。その詳細は省きますが、レンズの納入価格を反映することになっていますので、レンズごとに異なった価格になります。これは従来の価格の設定方法(対象レンズはどれも同一価格で提供)と大きく異なります。

 

当然ながら、レンズの納入価格がその性能を反映している訳ではありませんので、誤解が生じないか心配です。価格が高いから良い、安いから悪いとは言えません。EDOF、二焦点、三焦点それぞれに利点と欠点があり、一人一人の患者さんにとって最適なレンズは異なります。

 

もともと近視の強い人は近くがよく見える2〜3焦点が良いでしょうし、遠視の方では遠方重視のEDOFが良いのが一般的です。眼底に何らかの異常があったり、LASIKやRKの既往がある場合、単焦点またはEDOFが良いとされています。最も高い価格のパンオプティックスが全例にふさわしい訳ではありません。(それだったらもっと話が簡単で、こちらもありがたいくらいです)

 

また、トーリック(乱視矯正レンズ)は普通よりも数万円高くなりますが、これをケチるととんでもないことになります。トーリックが必要かどうかは医師の判断に委ねなければなりません。

 

更には、術後の屈折誤差にどう対処するかという大問題があります。これについて、IOLの度数交換手術は保険適応にならないとされていますし、タッチアップレーシックも自費診療ですから、いずれにせよ、健康保険ではカバーされず、追加の出費がありえることになります。術前からよくご理解いただかなくてはなりません。

 

という訳で、若干の誤解と混乱が生じる可能性はあるものの、保険適用になり、自己負担金は大幅に減額されますので、これからも多焦点レンズの需要は減ることはないどころか、さらに普及が進むと予想されます。

 

坪井眼科では、先進医療で培った経験を生かし、4月以降も変わらず、適応を見定めながら、慎重に多焦点レンズを取り扱って行く予定です。

 

具体的な自己負担金につきましては現在検討中であり、届け出が済み次第院内掲示やHPでお知らせいたします。

 

ST