バイオリンソナタやチェロソナタと言われる楽曲は、必ずピアノ伴奏が付いています。伴奏がない場合は特に断って、「無伴奏〜」となります。
この命名法ですと、これらのソナタはバイオリンやチェロが主でピアノが従と思われるかもしれません。しかし、少なくともベートーベンの時代まではそうではありませんでした。
モーツァルトのバイオリンソナタは、「Sonates pour le clavecin qui peuvent se jouer avec l'accompagnement de violon」というような題が作曲者によって付けられており、バイオリン助奏付きのクラヴサン(チェンバロ)ソナタということです。
当時の鍵盤楽器はチェンバロまたはフォルテピアノで、今のピアノほどの性能ではなく、音の強弱、音色の幅も狭く、ダンパーペダルも普及しておらず、音に伸びがありませんでした。その弱点を補うために、弦楽器で補強したということです。
モーツァルトの作曲したピアノソナタは18曲ほどであるのに対して、バイオリン助奏つきソナタはその倍ほどあります。更に、オーケストラ助奏付きソナタ(コンチェルト)も独奏用よりよほど多かったのです。
モーツァルトの場合、ピアニストにとって(独奏用)ソナタ以上にいわゆるバイオリンソナタ、ピアノコンチェルトが重要です。
これがベートーベンになると、ピアノソナタ32に対し、バイオリンソナタ10、ピアノコンチェルト5ですから、ピアノ独奏の比重が増していることがわかります。
ショパンに至っては600曲余りのうちほとんどがピアノ独奏曲で、バイオリンソナタは無く、チェロソナタが1曲のみです。ピアノの性能がほぼ現代に匹敵するほど進歩した結果、助奏が必要なくなったことが大きかったと思います。
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