ソルディーノ

ダンパーは弦の音を打ち消す消音器と書きましたが、ピアノでは繊維を固めたもので弦を押さえつけます。イタリア語でソルディーノといいます。ピアノの中を覗いた人はよくご存じのことでしょう。

バイオリンとかチェンバロに比べて、ピアノの弦は楽器の中では最も重く、張りがあります。手で押さえたくらいでは不十分で、強く押さえつける装置となっています。チェンバロのダンパーはもう少し柔らかいですし、バイオリンのダンパーは弦ではなく、支持板を押さえる錘です。ハープでも基本開放弦で、消音は手で行っているようです。

「消音器をつけて」という指示は、イタリア語でCon Sordino、消音器なしではSenza Sordinoということになります。

つまり、Senza Sordinoとは、ピアノではWith Pedalと同義語です。

ベートーベンの「月光ソナタ」1楽章では、「非常にデリケートに表現するため、Senza Sordinoで」とわざわざ断ってあります。楽章を通じて右ペダルを使うように指示されています。

ベートーベンによる革新的なピアノ書法がここでも見られます。

ついでに、グランドピアノの左ペダルはソフトペダルの名のとおり、音を「ソフト」に「小さく」するペダルです。ピアノの弦は同音につき3本が標準ですが、そのうち1本のみを叩くように、ハンマーをスライド(横移動)させます。楽譜の指示はUna Cordaです。一本の線のイタリア語ですね。通常はTri Corda(3本線)というわけです。

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