今日は夜にフェスティバルホールで辻井伸行さんの演奏会がありました。若手バイオリニスト三浦文彰さんとのジョイントコンサートでした。
前半は三浦さんによるチャイコフスキーのバイオリンコンチェルト。そして後半が辻井さんによるラフマニノフのピアノコンチェルト3番でした(ラフ3)。
ラフ3は最も難しいピアノコンチェルトの一つとして有名で、映画『シャイン」では、この曲を練習しすぎて気が狂うというシーンがあったくらいです。
今まで、実演でも何度も色んなピアニストで聴きましたし、CDは作曲者自身をはじめホロビッツ、アシュケナージなど何種類もの演奏を聴いています。今日の辻井さんの演奏は、その中でも最高の名演と思いました。
とにかく音が多い曲ですから、細部にばかり注意しがちで、全体として「練習曲」のようになってしまっている演奏も多い中、辻井さんのは全く違いました。
一楽章のカデンツは音の多い方を弾かれていたのですが、ゆっくりしたテンポで朗々と響かせておられ、ラフマニノフ節全開でした。ここを早いテンポで弾こうとすると、旋律が聞こえなくなります。
一方、3楽章の「より早く(piu mosso)」の部分は、楽譜通り急速に演奏され、その迫力に圧倒されました。あの小さな体のどこからこんなエネルギーが湧いてくるのでしょうか。
楽譜の指示を良く生かしつつ、辻井さんの感性で大きく旋律を歌わせ、最後の大団円の盛り上がりは最高でした。
辻井さんはありきたりのピアニストではありません。この人の演奏会に立ち会えるだけでも、日本人で良かったと思うくらいです。
ST