シューマンのピアノ曲

去年の暮れからショパンばかり弾いていましたので、ちょっと毛色を変えて、最近はシューマンに取り組んでいます。

シューマンについて書かれた最近の本「シューマンー全ピアノ作品の研究」西原稔著 音楽之友社、によりますと、シューマンが生きていた1810年から1856年までのうち、1815年から1848年まではフォアメルツ時代と呼ばれ、メッテルニヒが主導したウィーン体制でした。貴族ではなく、上級市民が自己主張しだした時代で、いわゆるロマン主義です。

ベートーベン、シューベルトは、1815年以降、とてつもない名曲を残しています。これらは彼らの人生の総決算としてなるべくしてなったとも考えられますが、フォアメルツ時代の産物だった可能性もあります。といいますのも、シューマンに関して、1840年頃までの作曲に比べ、1848年以降、同じ人物とは思えないほど作風が変わり、どう考えても劣化したと思われるからです。フォアメルツからビーダーマイヤーに変化するとともに、名曲が出てこなくなったようです。

とはいえ、シューマンを理解するには、初期の名曲のみならず、後期の作品にも注目するべきだと思います。たとえば、ユーゲントアルバム作品68(1848年)など、子供でも弾ける曲ではありますが、すごく芸術的で素敵な作品です。

シューマンピアノ曲全曲楽譜は、昔からクララ シューマン編のブライトコプフ版が有名でしたが、最近、ヘンレからも全6巻として発売されています。写真の左が前者、右が後者です。

ヘンレ版は楽譜の体裁はとても良いのですが、ブライトコプフ版にあるossiaが省かれている部分もあり、指使いやペダル指示も異なりますので、やはり両方とも揃えて参照するべきかと思います。

ライプチッヒ生まれのシューマンが満を持してウィーンに乗り込み、滞在していたころの作品、作品18から作品32まで、が特に優れているように思います。具体的には以下の通りです。

OP18 アラベスク
OP19 花の曲
OP20 フモレスケ
OP21 ノヴェレッテン
OP22 ソナタ2番
OP23 夜の曲
OP26 ウィーンの謝肉祭騒ぎ
OP28 三つのロマンス
OP32 ピアノ曲集(ソナタ断片?)


中でも作品21「ノヴェレッテン」はお気に入りです。弾くのもとても難しい、難曲です。

ショパンなどにはあまり見られない、一つの指で音を押さえつつ、同じ手の他の指を動かすという、弾きにくい奏法が多用されます。多分、バッハの影響を受けているのでしょう。和音にしても、ひとつの音を意図的に強調しなければならないことが多々あります。

ノヴェレッテンのお薦めCDはアンドラーシュ シフの実演盤(ECM 472119)で、信じられないくらい達者な演奏です。


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