屈折矯正白内障手術は一日にしてならず

昨日、1949年の人工水晶体挿入術以来、白内障手術が屈折矯正手術になったと書きましたが、あくまでも第一歩を記したとのことで、本当に屈折矯正白内障手術となってきたのは、多焦点IOLが普及しだしたここ10年程前からのことでしょう。誤解のないように書き添えます。

私が研修医だった1970年代後半、白内障手術といえば水晶体全摘というものでした。人工水晶体というものがあるという話があっただけで、実際には使われていませんでした。日本で眼内レンズが導入されたのは1980年代半ば以降です。

しかし、術後の屈折度数がしばしば狂っていたので、まだまだ「屈折矯正」と言えるレベルではありませんでした。切開幅が大きいことからくる乱視も問題でした。

屈折度数の予測がほぼ正確に行なえるようになったのは、光学的眼軸測定装置の開発と屈折予測式の改良によります。ここ5年ほどで急速に進歩いたしました。また、手術による乱視が問題なくなったのも、数年前から一体型アクリルレンズが使われ、2mm少々の切開幅から挿入可能になったことによります。

レーザーによる屈折矯正手術(レーシック)が普及しているので、万一の場合の度数ズレ対策も出来ます。

多焦点IOLによる老眼治療は、上記のようないろんな分野における進歩のおかげでやっと可能になったものです。

Ridleyの最初の手術から半世紀以上の時間を必要としたことになります。

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