難治性視神経炎の思い出

視神経炎はその名の通り、視神経に炎症を起こして視力が低下する病気です。
原因は不明のことが多いのですが、多発性硬化症など中枢の病気に伴って起こる場合もあります。
視神経炎では一般的にステロイドパルス療法という、大量のステロイドを点滴投与する方法が行われます。
これが奏功して視力が回復する患者さんはまだ良いのですが、奏功しない患者さんは薬の副作用に悩まされるばかりで大変です。
私が研修医の頃にも、両眼の視神経炎でステロイドパルス療法を複数回行ったものの全く効かず、副作用でつらい思いをされながら両眼とも失明した患者さんがおられました。
その後、このような難治の視神経炎の視神経炎の一部に、抗アクアポリン抗体というものが関与していることが判明しました。
そして、今年に入ってからついに、この抗体の産生を抑制する薬剤の投与により、視神経炎の再発が抑制できたという素晴らしい発表がありました。
(⇒独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 
神経難病「視神経脊髄炎」の症状を改善 〜難治患者7名で抗IL-6受容体医薬の有効性を実証〜
ステロイドによる治療は、簡単に言えば病気になりそうな部分をまとめて抑え込むという大雑把な治療ですが、この治療のようにターゲットを絞ることができれば、副作用を軽減しつつ高い効果を得られます。
このような治療法がこれからも発展することにより、多くの患者さんが失明から救われることを期待しています。
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