緑内障手術が熱い

私が眼科医を始めた1970年代後半、どうにも訳のわからない分野(と思ってしまったの)が緑内障でした。ピーエル点眼(縮瞳剤)とダイアモックス内服が主な治療手段で、手術はトラベクレクトミーが始まったばかりで、効果は効かなかったり強すぎたりと、散々でした。

 

対照的に、網膜剥離は一度の手術でほとんどが治癒する状況は現在とさほど変わらず(手術の内容は激変していますが)、とてもやりがいがある分野でした。私は幸い、網膜グループに所属させてもらえたのですが、高名な眼科医となっているちょっと後輩のE先生は、同じ頃緑内障グループに配属され、腐っていたのを覚えています。

 

現在主流の点眼薬、ベーターブロッカー(1980年)やプロスタグランジン製剤(1990年)が出る前はこんな状態だったのです。

 

ところが、ここ10年を見ると、網膜剥離の手術は硝子体手術が定着しておりほとんど変化が見られませんが、緑内障手術の分野は大いなる進歩が見られます。

 

レーザー(SLT)、フックロトミー、白内障手術と同時のアイステントなどが新たに加わった術式で、従来のMMC併用トラベクレクトミーを加えると、初期から晩期に至るいろんな緑内障に適切な対応が可能となりました。

 

これにより、副作用が懸念される点眼薬の長期重複使用を避けることができるようになってきました。

 

また、OCTや静的視野などの検査機器の進歩により、早期から定量的に緑内障を診断できるようになったことも大きな変化です。

 

アイステント以外にも、いろんな効果を狙った緑内障手術用デバイスが出てこようとしています。しばらくはこの分野に注目です。

 

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