選定療養になった多焦点レンズ

コロナ騒動の陰にすっかり隠れてしまった感がありますが、この4月から多焦点レンズが選定療養になっていることを再確認したいと思います。レンズ代金の自己負担が発生するとはいえ、保険診療に組み込まれたのは、患者さんにとって朗報です。

 

中でも、保険診療で認められている同時手術が可能というメリットが意外と大きいのです。

 

多焦点レンズで術後に良好な視力が期待できるのは、眼底や視神経に異常がない場合です。硝子体混濁や網膜前膜によるわずかな視力低下でも、多焦点レンズでは大きな問題となることがあります。

 

早速、そんな症例を経験しました。網膜前膜を伴う白内障の患者さんが、多焦点IOLを希望され、3焦点のPOXを挿入すると同時に、網膜前膜のピーリングが行われました。硝子体手術と白内障手術の同時手術です。

 

網膜前膜は白内障患者の1割くらいに存在するとされ、中には視力低下や変視症(ものが歪んで見える)を伴うものがあります。また、白内障手術の術後炎症と関係し、視力が低下する嚢胞状黄斑浮腫が、前膜の存在により好発します。安全に取れるなら、白内障手術の際に取っておいた方が無難なのです。

 

従来の先進医療では、多焦点IOL挿入が単独手術と位置付けられており、硝子体手術が必要であっても別々に行うのが普通でした。今回、同時施行が可能となったことにより、患者さんにとってより優しい取り組みができるようになりました。

 

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