ショパンの演奏

ショパン演奏家として昔から有名なコルトールービンシュタインはCDで多く残されています。アシュケナージポリーニも含め、もちろん立派な演奏には違いありませんんが、ショパンが聴いたとしたらどう思ったでしょうか。

ショパンがどのような演奏をしたか、あるいはどんな演奏を求めたかについて、最近になっていくつかの書籍が出ています。もっとも有名なのが、「弟子から見たショパン」(ジャン=ジャック エーゲルディンゲル著、音楽之友社)です。

ここでは、ショパンが親しく付き合った友人、お金をとって弟子にした人、多くは貴族の子弟、の証言がまとめらています。また、ショパンが自ら書き加えた演奏方法、指使い、なども論評されています。

もう一つ、ショパンの弟子の中でもまとまった書籍を残したロシアの貴族、ウィルヘルム フォン レンツ著の「パリのヴィルトゥオーゾたち」(株式会社 ハンナ)も面白いです。

ショパンと直に接した人々の証言によると、ショパンは「音量は小さく」「普通では考えられない指使いで」「歌うように」弾いたとのこと。同時代のリストとは対照的で、大きな会場での演奏会はほとんどしていません。

ピアノの弟子たちはほとんどがアマチュアのピアノ愛好家ですから、演目はワルツ、ノクターンマズルカが主体です。バラード、スケルツォ、もちろんエチュードもプロの演奏家用だったようで、レンツには弾かせてもらえなかったようです。

ショパンは楽譜通りではなく、華麗なヴァリアント(変化)を好みました。もっとも有名なノクターンの2番(作品9−2)では、エキエルによりヴァリアント付きの楽譜が出版されています。

ショパンが望んだ自由な変奏をなぜ現代のピアニストはしないのでしょうか。CDが普及し、演奏会といえばコンクールの優勝者ばかりということで、楽譜からはみ出た演奏がなかなか出来ないのでしょうね。

ショパン以来の伝統はごく一部の演奏家によるCDで聴くことができます。パッハマン、モイセイヴィッチ、コチャルスキーなどです。ユーチューブにありますので一度聴いてみてください。

モイセイヴィッチによるバラード4番のヴァリアント(たった1小節のみですが)はショパンも喜んだことでしょう。

ホロヴィッツも最晩年の幻想即興曲でヴァリアントを加えています。さすがですね。

「我々は確信を持って言える。ショパンに勝るものは誰もいないだろうと。芸術家にとって最も高貴で正当な満足感は、自分自身が与えられた世評を上回り、手に入れた成功自体より優れており、勝ち得た栄光よりさらに偉大であると感じる事ではなかろうか?」F リスト (V レンツの上記の著作より)

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