40年以上も医師をしていますと、いろんなことを経験いたします。親子2代はおろか、3世代にわたっておつきあいさせていただく患者さんもいらっしゃいます。
先日多焦点眼内レンズ、シンフォニーを移植した患者さんが、「30年前の学生時代、外傷の治療を先生に受けました」とのこと。当方、全く思い出せませんでしたが、なんでも前職時代、フロントガラス外傷の縫合をしたことがあったと。
その折、実際に縫ったのは研修医でしたが、横であれこれ言う声が聞こえたとのこと。その声を覚えていてくださっていたのです。なんと奇遇なことでしょう。
あの頃は、シートベルト装用が義務付けられていませんでしたので、追突事故によりフロントガラスに頭をぶつけ、角膜を傷つける人が多かったのです。
確かに角膜外傷の痕跡があり、多少の不正乱視がありましたので、テクニスマルチではなくシンフォニーを選択した患者さんだったのです。
乱視や眼底疾患で視力が出にくい可能性がある場合、従来、多焦点レンズの適応はない、と説明しておりましたが、シンフォニーが出て適応が拡がりました。
その患者さんも、不正乱視にもかかわらず裸眼視力1.0以上になり、とても満足されました。よいレンズが出たものです。
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