白内障手術は両眼が基本

老人性の場合、白内障が出て視力が下がって来たとしても、大抵は右か左かの片眼が最初に視力低下し、ほうっておくと両眼とも見えなくなってくるのが普通です。たとえば、悪い方が矯正視力0.5で良い方が1.0だとすると、「まず、悪い方だけ手術して、様子を見たい」とおっしゃる方が多いのです。

「手術は怖い」との恐れと「見えているから大丈夫」という気持ちの両方が理由と思います。しかし、70代以上の高齢者の場合、片眼だけの手術よりは両眼の手術をあまり間隔を開けずに行なうほうがよいです。

理由のひとつは、屈折の問題です。たまたま健常眼の屈折が正視〜軽度近視の場合はよいとして、遠視や高度近視の場合、手術で屈折合わせ(手術眼の屈折を健眼に合わせること)をすると屈折異常が残ってしまいますので、術後のクオリティが悪くなります。

第二に、手術により得られる視力、色合いが健眼のそれを上回ることが多く、術後に見え方の違いが気になる場合が多いのです。そのせいで、もともと非優位眼だったほうが優位眼になり、見え方の変化にとまどうこともあります。

第三は、多焦点IOLなどの特別な(見え方の)レンズを入れる場合、両眼に入れておかないとレンズの本来の性能が発揮できないことになりかねないからです。遠くと近くの双方とも満足した視力を得るためには、両眼視という条件がどうしても必要になってきます。

最近海外でもよく話題になっていますが、50代で老眼になるまでの水晶体は健康ですが、老眼になったあと、たとえ白内障が出ていなくても、水晶体の機能が年とともに低下し、具体的には屈折力の低下による遠視化、乱視の増加、収差の増加となって現れてきます。これが更に進んだ状態が白内障とも考えられます。

最近の進化した非球面IOLは、老眼以上白内障以下の眼に対しても、治療効果を発揮できます。

高齢者の白内障手術はなるべく両眼とも引き続き行なった方が、よい効果が得られることがご理解いただけたでしょうか。

ST