血管新生緑内障

私が眼科に入局した十数年前、指導医の先生方が最も悩まされていた疾患の一つが「血管新生緑内障」でした。
世間一般で言われるような普通の緑内障とは異なり、眼内の虚血が原因となって発症します。
もろい新生血管があちこちに生えて眼圧が上がり、手術をしても術中、術後とも血まみれになってしまうので、当時はとても予後不良でした。
覚悟を決めて硝子体手術を敢行したものの、術中に出血が止まらなくなって手術続行不可能となった症例があり、皆がつらい思いをしたのを今でも思い出します。
このように難治であった血管新生緑内障も、近年の医学の進歩のおかげでずいぶん予後は改善されつつあります。
これに最も貢献しているのが、黄斑変性症でも大活躍の抗VEGF薬です。
これを目に注射すると速やかに新生血管が退縮します。
しかも、眼圧もある程度下がることが多いので、その間に虚血部のレーザー治療、硝子体手術、緑内障手術など様々な処置を行うことができます。
当院でも、今年に入ってから血管新生緑内障の患者さんが時々来院されています。
医学の進歩に感謝しています。
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