無症候網膜剥離

当院で近視矯正手術(LASIKまたはICL)を受けられる患者さんには、術前に詳しく眼底検査を行います。近視の強い方ばかりですので、網膜裂孔や網膜剥離の頻度も高く、用心しなければなりません。

網膜裂孔は年に数例、網膜剥離は数年に一例くらいの割合で見つかります。年に200眼くらいの症例数ですから、当然といえば当然のことかもしれません。

網膜剥離といっても、視力低下や視野異常などの自覚症状のない、いわゆる無症候網膜剥離です。若い方の網膜剥離の中には、周辺部の変性の中の円孔が原因で、薄く徐々に剥離してくるタイプの網膜剥離があります。硝子体変性とともに裂孔があいて、割と急に進行するタイプとは病型が異なります。

黄斑部に達しない、周辺部だけの網膜剥離ですので、矯正視力の低下はなく、視野異常も詳しく検査を行わない限り、本人の自覚だけではわからなことも多いのです。

自覚症状がないからといって、これをそのままにしてLASIKを行うことはできません。万が一剥離が進行し、手術が必要になった時、LASIKをすでに受けていると、手術がしにくかったり、手術により屈折異常が悪化することになるからです。

網膜剥離が完治した後であれば、屈折が安定したことを見計らってLASIKを行うことが可能になります。

若年性で、周辺部の円孔による扁平な網膜剥離に対しては、バックリング手術を行います。裂孔と変性に冷凍凝固をあて、その部分の強膜側にシリコンスポンジを縫い付け、強膜を内陥させ、排液を行うことにより、裂孔部分の網膜と脈絡膜(色素上皮)を癒着させ、裂孔を閉鎖すれば、網膜剥離は完治いたします。

バックリング手術により、屈折はいくぶん近視化いたします。また、乱視も出ることがあります。LASIKでは、バックリング手術により惹起された異常も含めて治すことができます。

患者さんにとっては青天の霹靂ということになりますので、丁寧な説明が必要となってきます。なお、当院ではこのような患者さんのバックリング手術を日帰りで行っています。


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