最近の網膜剥離手術

先日、飛蚊症網膜剥離の初期症状であるという話を書きました。本日は、網膜剥離になってしまった場合の治療法について、最近の話題を踏まえて解説したいと思います。

 

網膜剥離の手術には、網膜復位術、硝子体手術、気体網膜復位術の3つがあります。現在、網膜剥離に対する手術は硝子体手術が選択されることが最も多く、国内においては網膜剥離の7割以上が硝子体手術にて治療されていると報告されています。しかし、硝子体手術が安全に行われるようになるまでは、網膜復位術が主流でした。

 

硝子体手術と網膜復位術の大きな違いは、硝子体手術が目の中から網膜剥離を治すのに対して、網膜復位術は目の外から網膜剥離を治す手術になることです。また、硝子体手術が眼内の硝子体を切除する手術であるのに対し、網膜復位術は眼内の硝子体を利用した手術になります。硝子体は加齢とともに液化し、可動性が増し、柔らかくなります。ですので、高齢の方は硝子体手術が適しています。一方で、若い方は硝子体手術はややリスクが高い場合があり、網膜復位術が適している場合が多いと言えます。

 

最近、気体網膜復位術に注目が集まっています。気体網膜復位術は眼内に膨張性ガスを注射し、網膜剥離を復位させた後、レーザーを行うという術式です。実はこの術式は、40年近く前に大阪労災病院の恵美和幸先生が報告したのですが、その後、硝子体手術が発展し一度は忘れられていました。近年、カナダのDr. Muniが前向きに気体網膜復位術と硝子体手術の成績を比較し、適応を守れば良好な手術成績と高い患者満足度が得られることを報告し、再び注目されています。上で述べた硝子体手術、網膜復位術はどちらも侵襲の大きい手術ですが、気体網膜復位術は比較的軽度の処置で治療可能である点も、良い点だと言えます。

 

網膜剥離は失明につながる怖い疾患ではありますが、さまざまな治療方法が登場し、治療成績も向上しています。私たちもより低侵襲で良好な視力予後が得られる治療方法の追求をしていきたいと思っています。

 

K.T.