ゴールド スタンダード

標準治療(standard therapy)とは、医学的に最善の治療のことですが、この「標準」=スタンダードという言葉が曲者です。

ホテルを予約してスタンダードといえば、最も安く狭い部屋のことですし、ベッドでもスタンダード、クイーン、キングの順に大きくなります。要は、一般社会において、スタンダードとは最下位のレベルのことになっており、これをそのまま医療に応用してしまうと、大いなる誤解が生じるのです。

これは英語圏でも同じらしく、誤解を避けるために「gold-standard」という言葉があり、実際はこちらの方がよく使われています。

「過去の医学的研究や経験から、その疾患の治療法として最善と認められ、専門医により最も広く行われている」ということです。

医師は医療をランク付けし、価格をつけて提供することはありません。それは職業倫理に違反します。よって、良い治療法は学会等で共有され、広く世界で行われることになり、最善の方法が標準となるのです。

一般社会におけるスタンダードとの区別をするための言葉が「gold-standard」で、ほぼ医療に限り使用されます。

白内障手術のゴールド スタンダードは超音波摘出手術です。

眼内レンズのゴールド スタンダードは一体型アクリルレンズです。

屈折矯正手術のゴールド スタンダードはレーシックです。

網膜剥離手術のゴールド スタンダードは硝子体手術になりました。

加齢黄斑変性症治療のゴールド スタンダードは抗VEGF薬の硝子体注射です。 etc

いっそのこと、「標準治療」という紛らわしい言葉の使用をやめて、「最善治療」とか「至適標準治療」とかに変更できないものでしょうか。あるいは「共有治療」とか。専門医で共有されているからです。

ちなみに「gold standard」の本来の意味は「金本位制」です。

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