クレンペラーのCD

最近は原音再生=オーディオという言葉が死語になってしまいました。音楽はダウンロードするか、なんだったらクラウドから持ってくる時代ですから。音楽鑑賞はユーチューブという人も多いことでしょう。

しかし、デジタル音源を貧弱な装置で再生しても原音とはほど遠いものでしかありません。1960年代は原音再生に燃える人がとても多かったです。スピーカーはウェスタンとかアルテックとかタンノイとかの大型。アンプは当然真空管。ソースはアナログレコード(LP)でした。

そのころの「原音」は今でもよい音です。もちろん、実演の音とはまた違うのですが、CDとは比べ物になりません。実演に負けるのは音の大きさとレンジ(振幅)で、CDはその点が改良されたのですが、最も大切な音質がダメになってしまいました。

そのCDは、2000年以降、音質に改良が加えられています。ハイビットハイサンプリングやDSDといった技術によってです。SACDという新たなソースも出ました。

近頃CDが売れなくなっているせいで、昔の音源が大量に安価に再発される傾向にあります。もちろん音自体はCD出たての頃よりも良くなっていますので、びっくりするようなことも起こります。

一部に熱心なファンのいる往年の名指揮者、オットー クレンペラーのLPは、初期盤愛好家にとっても定番ですが、没後40周年を記念して売り出されたCDはポンド安も手伝って驚く程安価です。これらがまた音質も改善されているとあって、注目されています。

10枚組の「ロマン派交響曲集」が海外直販で1900円です。このうち、メンデルスゾーンの「スコットランド」や「真夏の夜の夢」は大変な名演、名録音ですし、シューベルトシューマン交響曲も素晴らしいです。これらの録音が聴きやすいのはステレオ初期のEMIの録音が優秀だったからで、録音された年代が古いほど音が良いという音楽業界の皮肉が体験できます。

このころはマイクが単純で、ミキシングもほどほどの2トラック、増幅は真空管アンプの混ざりけなしでしたので良い音がするのです。

ちなみに、当時のLPで上記録音を揃えたとすると、ウン10万円かかります。

このシリーズではあと、モーツァルト交響曲集、モーツァルト4大オペラ集、バッハ、ハイドン集も是非お聴きください。

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