先日、辻井伸行&オルフェウス室内管弦楽団日本ツアーの2日目のコンサートに行きました。私の大好きなベートーベン「ピアノ協奏曲第5番:皇帝」を聞くのを楽しみに行ったのです。
コンサートマスターに手を引かれて辻井さんは登場しました。今までいろいろな演奏会に行きましたが、辻井さんを見た瞬間、表現できない気持ちになり、涙が出そうになりました。フェスティバルホールを満席に埋め尽くした聴衆、皆が同じような気持ちになったのではないでしょうか。
そして、CDで何度も聞いた「皇帝」を辻井さんとオルフェウスが演奏します。目が見えない辻井さんは聴力と指の感覚とであの素晴らしい音楽を演奏しているのでしょうか?
37分間、一生懸命に聞きました。終わった瞬間割れんばかりの拍手がホールに響きました。
ピアノ演奏がこんなにも人に感動を与えることを初めて知った日です。 Y.T
昨年春に新装なった朝日のフェスティバルホールはとても大きな会場ですから、クラシックのコンサートで満杯になることは稀です。それが今回は満員札止め、実際の会場でも空席はごくわずか。これほどの熱気に包まれた会場はあまり記憶にありません。辻井さんはほんとうに幸せなアーティストだと思いました。
皇帝はこの日が日本初日であったため緊張されたのか、出だしのカデンツァでちょっと音をひっかける場面があり、どきっといたしました。その後、オーケストラの助奏がかなり長く続く間、辻井さんは上半身をグルグルと回し続けておられました。音楽にのめり込んでいるであろうその姿はまさにベートーベンを思わせ、こちらがその熱気にうたれ、身震いしてしまいました。
アンコールでは得意の「リゴレットパラフレーズ」(リスト)と革命のエチュード(ショパン)を弾かれました。打鍵の正確さ、フレージングの美しさ、全体の構成の確かさ、そして、音自体の美しさなどなど、ピアノの演奏で望まれるものをほぼ完璧に持っておられます。うらやましい限りの演奏技術です。
これからも、レパートリーを拡大して、我々の前でも定期的に公演してくれることを期待しています。
ST