ショスタコーヴィッチ

昔からショスタコーヴィッチが好きでした。多感だった1970年代、現代音楽作曲家として、ヨーロッパでは12音技法のシェーンベルクやベルク(ユダヤ人)、アメリカではガーシュインバーンスタインユダヤ人)が代表でしたが、ソ連ではショスタコーヴィッチとプロコフィエフが両巨頭で、あとハチャトリアン(スケートの真央さんが使った「仮面舞踏会」)など、今から考えても最も優れた作曲家達でした。

冷戦構造が終わった今となって、当時、ソ連は大変な時代だったことがわかります。第二次世界大戦の前後からスターリンによる恐怖政治となり、多数の芸術家や政治家が粛清されました。著名なピアニスト、リヒテルの父親は、ドイツ出身だったという理由で銃殺されたそうです。

ソ連最大の音楽家、作曲家たるショスタコーヴィッチ(1906ー1975)とて安泰ではありませんでした。何度も共産党幹部に批判されましたが、その都度、社会主義的正義を表現した曲を世に出して乗り越えました。

代表が交響曲5番で、苦難を乗り越え社会主義が勝利するというストーリーを思わせる、やや表面的な曲です。

ショスタコーヴィッチはモーツァルトにとても似ています。時の権力者に迎合した、表面的な曲を多数書いていることです。しかし、両者とも同じく天才ですので、心に染み入る曲も多数残しているのです。

ショスタコーヴィッチの交響曲4番はスターリンが怖くて出版できなかった曰く付きの曲です。粛清が横行した時代の恐怖感がとてもよく表現されています。

また、交響曲7番『レニングラード」は、対ナチス戦(第二次世界大戦、対ドイツ戦)に勝利した記念として書かれた曲で、当時の西側連合国アメリカやフランスで競って初演されました。アメリカでは名指揮者トスカニーニが初演したことでも有名です(CDで当時のライブ録音が出ています)。

1楽章でレニングラード攻防が描写されており、最初は気楽に始まった戦闘が悲劇に終わる様がリアルに感じ取れますのでとても怖いです。一度聴いて見てください。

冷戦が終わって、旧ソ連、現ロシアの作曲家が誰か、思い浮かびません。もちろん、アメリカやヨーロッパとて同じです。平和な世界は切実な芸術を生む土壌ではないのでしょう。

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