シューベルト(2)

シューベルトピアノソナタ全21曲というのは、最後のソナタ変ロ長調が21番という番号が振られていることによるもので、本当は補筆により完成したものですら20曲しかありません。12番のソナタ嬰ハ短調D655)の完成版は出版されていません。

遺作とされる最後の3つのソナタを最後のグループとすると、最初のグループは13番(イ長調)までの12曲で、14番(イ短調)から18番(ト長調)までの5曲が中期ということになります。

21番が最もよく演奏されるのは、芸術的深みと技巧の容易さがあるからでしょう。派手なところがないので逆に難しいとも言えます。

初期のソナタ、3番(ホ長調)や4番(イ短調)それに11番(ヘ短調)などの方が技巧的に難しく、華やかです。超絶技巧の「さすらい人幻想曲」も突然出来たのではなく、これらのソナタの流れに乗っていることがわかります。事実、「さすらい人」は13番と14番の間で作曲されています。「さすらい人」で技巧的頂点を極めたあと、更に技巧にこだわらない芸術性を深めていったのでしょう。

ソナタ1番(ホ長調)は18歳の頃の作品ですが、それまでに「魔王」「野ばら」「糸を紡ぐグレートフェン」などの有名な歌曲を始め、交響曲1、2番を作曲しています。シューベルトピアノソナタは1番から熟練した作曲家の手によるものです。

とは言え、最も充実しているのは、生前に出版された中期の3曲、16(イ短調)、17(ニ長調)、18番(ト長調)と遺作の3曲(19番ハ短調、20番イ長調、21番変ロ長調)でしょう。

これらは全て演奏時間30分以上で演奏会ではとても無理な演目です。あまり手垢に汚れていないので、自分で弾く楽しみもまた大きくなります。ベートーベンほど体力を消耗しないのもよい点です。

ウィーン原典版ソナタ全集を補筆、出版したマルティーノ ティリモさんが2月14日(水)に京都で20番のソナタを弾かれる予定です。とても楽しみですね。

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