白内障の両眼手術

白内障の両眼手術について、片眼のあと、もう片眼をいつするかについては、時代とともに変化してきています。超音波手術の前の時代、最低でも一週間あけるのが常識でした。慎重な施設は2週間あける場合もあり、実際、私が勤務していたころの近大眼科(昭和53年頃)では、両眼で一ヶ月の入院を必要としていました。

これは、術後の視力回復がとても遅かったからです。

ところが現在、術直後からそこそこ見えますし、翌日には矯正視力1.0に回復しているのが普通になってきています。そうすると、両眼手術でもそれほど日にちを空ける必要はないことになってきます。

それでも慎重な医師は、眼内炎の発症を恐れています。眼内炎は術後数日で明らかになりますので、万が一眼内炎が発生しても、一週間の日にちを空けておれば、両眼に及ぶことはないという訳です。

しかし、眼内炎は理論的には手術の当日、その場で感染している訳で、別々の器具でそれぞれ独立して手術をすれば、別に日にちを空けなくても一緒という考えも成り立ちます。

白内障手術では矯正視力のアップと同時に、屈折の改善(近視、遠視、乱視、老眼の治療)も意図されることがあります。屈折矯正白内障手術です。その場合、片眼だけ手術した後は、もともとの屈折異常が強い場合、大きな不同視となりとても不便です。手術をしていない眼にコンタクトレンズをするなどの処置が必要になってきます(不同視が強いとメガネがかけられないため)。LASIKや有水晶体眼内レンズなどの屈折手術は両眼同時に行うのが常識で、白内障手術でも屈折手術の要素が強い場合、そのほうがベターということになります。

ということで、当院では以前より両眼同日、あるいは連日手術を多数行ってきました。

ところが、この4月から保険点数の一部が、術後一週間以内では算定されないという、時代に逆行するかのような措置がなされました。これについては、詳細を確認しているところではありますが、とりあえず、保険手術に関しては、一週間以上空けることが事実上義務づけられたことになってしまいました。

患者様にはご迷惑をおかけしていますが、白内障の2眼目の手術が一週間目以降になってしまうことをご了解いただくよう、お願いいたします。

なお、多焦点IOLについては自由診療のため、同日や連日手術も可能です。

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