網膜硝子体のトレンド

米国Ophthalmology誌の最近号で、2000年から2014年にいたる期間における、網膜硝子体手術(注射含む)の変遷を、保険請求のデータから調べた興味深い報告がありました(Trends in Vitreoretinal Procedures for Medicare Beneficiaries, 2000 to 2014. Ophthalmology 2017;124:667-673)。

当欄やホームページでも事あるごとに、治療方法の変化について書いておりますが、それがいわゆるビッグデータにより具体的に調べられており、とても参考になります。もちろん米国におけるデータです。

まず、網膜剥離の手術方法について、強膜バックリング法が2000年から五分の一に減って、2014年には網膜剥離手術の5%を占めるに過ぎなくなっています。硝子体手術が83%、気体注入法が12%です。また、術中の凝固法において、冷凍凝固は三分の一になり、今や光凝固の十分の一です。

網膜剥離の手術において、ノーバックル、硝子体手術、術中光凝固、ガスタンポナーデがゴールドスタンダードということになります。もちろん、すべて日帰り対応です。

薬物治療について、2000年当時、球後注射とテノン嚢下注射が同数でしたが、2014年では前者が激減し、ほとんど行われなくなりました。ところが、2000年では治療全体の0.55%に過ぎなかった硝子体注射がなんと、89563%増加し治療の87%を占めるまでになりました。

それにつれて、もちろん、ARMDに対する光凝固が激減、また、一時ブームだったPDT(光線力学療法)も2004年ごろにピークを迎えたあと、2014年では十分の一以下に激減いたしました。すべて、抗VEGF薬の硝子体注射にとってかわられたことになります。

「世界基準の先端医療」を旨とする当院でのトレンドと米国でのトレンドは当然ながら一致しています。今後はどのような変化があるのでしょうか?

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