小ハ長調

シューベルトハ長調が特別と書きました。傑作とされる曲にハ長調が多いのです。

シューベルトのルーツにはドイツ舞曲があります。子供の頃から作曲したピアノのための舞曲がたくさんあり、弾いていて同じような曲にうんざりするほどです。その調性がハ長調を基礎とした、イ長調ト長調などで、シューベルトの音感にハ長調が基礎として染み付いていたのでしょう。

ハ長調といえば楽譜が読みやすい利点がありますが、ピアノの弾きやすさからいえば最も難しいキーです。ショパンが指摘したように、手の短い指、親指と小指で白鍵、人差指、中指、薬指が黒鍵というのが最も弾きやすい手の位置ですから、ロ長調とかのシャープ、フラットが多いキーの方が弾きやすいからです。

シューベルトはそんなことお構いなしにハ長調の曲をたくさん書きました。

前回あげたハ長調の傑作群は大ハ長調と言うべき作品ですが、もう少し有名でない曲でもハ長調の名曲がたくさんあり、「小ハ長調」といわれます。交響曲で小ハ長調は第6番ですし、ピアノソナタでは2番と10番がそうでしょう。

ピアノのための幻想曲でも、大ハ長調の「さすらい人幻想曲」に対して、小ハ長調とも言うべき曲があります。「グラーツ幻想曲」という、1960年代に発見された馴染みのない曲です。

これがシューベルトの作品である確たる証拠はありませんが、一度聴くなり弾くなりすると、確信することでしょう。

ユーチューブにリリ クラウスの名演がアップされていますので一度お聴きください。

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