郎郎(ランラン)のモーツァルト

今日は午後7時から、シンフォニーホールへピアニストのランラン(郎郎)を聴きに行きました。世界各地で絶賛されている人ですから、とても楽しみにしていたのです。

曲はモーツァルトソナタ3曲(5、4、8番)とショパンのバラード全4曲でした。どの曲もなじみのあるものばかりで、特に、モーツァルトソナタ5番はピアノを習ったことのある人ならだれでも子供の頃に弾いたことでしょう。

ランランはこのような、誰でも弾いたことのある、あるいは知っている曲を、全く予想できないような独創的な解釈で弾きました。その結果、モーツァルトが現代によみがえったような、不思議な感覚を覚えました。

モーツァルトの時代のピアノは今のピアノとは全く性能が違い、強弱や表情付けなどが出来にくい代わりに、均一な音を出すのが容易でした。モーツァルトはとても素敵な音楽を書いたのですが、当時の楽器を前提としているためか、楽譜はとても素っ気ないものでしかありません。

しかし、ランランは、音楽の要求するダイナミックスを、自らの感じた通りに最大限に表現しつくし、時にはテキストとは異なった表情、強弱も辞さず、圧倒的な音楽を再現してみせたのです。これにはびっくりしました。

イ短調ソナタは中でも名作です。あまりの迫力に抗せず、1楽章が終わったところで、大多数のお客さんが拍手をしてしまいました。3楽章はp(弱音)で始まるのが難しいと感じていたところ、ランランは大胆にもf(強音)で開始し、とてもダイナミックに演奏しました。

最も驚いたのは、アンコールの最後に弾いた「トルコ行進曲」で、超快速の中に、きっちりと鼓笛隊のリズムが入っており、超絶技巧を聴かせてくれました。

皆がよく知っている曲で驚かせ、感心させるというのがランランの戦略のようです。

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