誰が払う?

今月のJCRS(2021年12月号)に面白いエディトリアルが載っています。本文中の論文、「Time-efficiency assessment of guided toric intraocular lens cataract surgery:  pilot study,  Barbera-Loustaunau et al」に対するコメントです。

 

この論文では、術中、顕微鏡の視野にトーリックレンズの軸を表示してくれるシステムを使った場合と、マニュアルで軸をマーキングする従来の方法を比較しており、前者は平均2分の手術時間短縮を認めたものの、軸ずれや視力、屈折などの手術の結果は同等であったとのことです。

 

この器械を使うには数百万~1千万の投資が必要です。では、それを誰が負担するべきでしょうか。手術の結果は全く同じですから、患者さんにご負担いただくわけには行きません。時間が1例あたり2分短縮されることは、何例もすれば結構な差になるわけで、術者の負担、ストレスが減じることでしょう。となると、これが高い投資に見合うものと判断すれば、術者が負担して設備投資リストに加えるとの判断もありでしょう。

 

エディトリアルの友人が述べるには、「これはタクシーと一緒だね。運転手がマニュアルでギアをかき回して運転するか、オートマチック トランスミッションの車を使うかの差だよ。乗客は運転手がどんな車に乗ろうと、料金は一緒だからね。」「ウーバーイーツでもそうだよ。配達人が自転車に乗ろうが車に乗ろうが食事代金は一緒だからね。」

 

フェムトレーザーを用いた白内障手術でも同じことが言えます(文献1)。こちらは時間も短縮というわけにはいきません。CCCという手術操作にストレスを感じている術者にとっては有効かもしれませんが、また別のストレスが出てくる可能性もあります。テクノロジーの進歩がかならずしも良いとは限らないようです。

 

ST

 

1. Femtosecond laser-assisted versus phacoemulsification cataract surgery  (FEMCAT):  a multicentre participant-masked randomised superioriy and cost-effectiveness trial. Lancet 2020;395:212-224.