フー ツォンのショパン

ピアノ音楽のなかでもショパンとなると弾くのも聴くのも大好きです。しかし弾くとなるとテクニックの制限から思うようにはいきません。ということで、CDで出ている演奏の数々を聴いてきました。

 

ショパンといえばルービンシュタインコルトー、フランソワあたりが昔の定番で、もっと若い世代でもポリーニアルゲリッチアシュケナージとなるでしょうか。日本人演奏家でもショパンの全曲演奏会を何度もしている横山幸雄など有名どころです。

 

ショパンは主要曲を全部網羅したとしても、CDで10~12枚くらいに収まります。個人でほぼ全集を完成するピアニストも多いのです。小生が所蔵するのはルービンシュタインはじめ、フランソワ、アシュケナージ、マガロフ、ハラシェヴィッチ、ドゥシャブールなどですが、昨年の暮れに上海生まれのピアニスト、フー ツォン(Fou Ts'ong)の10枚組のアルバムが出ました。

 

フーは1955年のショパンコンクールで3位入賞しており、同じコンクール2位のアシュケナージ、1位のハラシェヴィッチとの比較も興味深いところです。

 

フーは1934年、上海の生まれ。1953年にワルシャワに留学しショパンの音楽を学び、1955年にショパンコンクールで注目されましたが、中国で文化大革命の嵐が吹き荒れ、インテリだった両親が犠牲になったので、母国へ帰ることなくイギリスに永住したそうです。これは、ショパンが20才以後母国ポーランドに帰ることなくパリで生涯を終えたこととよく似ています。

 

フーのショパン演奏はそんな境遇を反映したからか、哀切の響きに満ちています。特にノクターンマズルカが昔から名演とされています。現代では珍しい個性的な表現です。毒にも薬にもならない演奏ではありません。

 

フーのショパンアルバムは昨年暮れに発売された途端に売り切れ、入手困難が続いていましたが、あまりの人気で増版されたのか、今ならHMVやアマゾンに在庫があるようですので入手できます。フーは2020年、コロナウィルス感染で他界しました。

 

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