多焦点IOLの難しさ

昨年の4月以来、多焦点IOLが選定療養になりました。それまでは先進医療であり、特約付きの民間の医療保険に入っていると費用の100%が補填されたことにより、実質「タダ」で多焦点IOLが受けられたのです。昨年3月まで多焦点ブームがあったことは否定できません。

 

選定療養になると健康保険との併用が可能となり、負担の総額は減ったものの、負担分が民間保険でカバーされることはなくなりました。レンズの種類により異なりますが、15〜36万円の負担金が健康保険の自己負担とは別に発生します(当院の場合)。

 

実質的に負担増になったことで、昨年4月以降、多焦点IOLがどの程度患者さんに支持されるかが注目の的でした。当院では幸い、昨年4月以降も途切れることなく多焦点IOLの希望者がおられます。自己負担金があるので、本当に必要な方だけにお勧めできるようになりました。

 

今日は全部で11件の白内障手術を行いましたが、そのうちの4件で多焦点IOLを使用しました。うち1件は過去にLASIKを受けられていた方、もう1件はICL手術を受けておられました。

 

LASIKやICLは屈折手術であり、裸眼視力の改善を目的としています。過去にこのような手術を受けられた患者さんは裸眼視力への思い入れが強いのが普通です。結果として、白内障手術を受けられる際も、多焦点IOLを選択されることが多いのです。

 

ICL術後の場合は、ICLを摘出してから引き続き白内障手術を行うことができます。ICLは柔らかい素材ですので、摘出は比較的容易です。多焦点IOLの度数はICLが入っていても測定可能です。しかし、LASIK後の場合は、IOLの度数計算が狂いやすく、通常以上に注意が必要になってきます。

 

裸眼視力が良好となるためには、1)眼底や神経に異常がないこと、2)手術に成功すること、3)選んだIOLの度数に狂いがないこと、の3つの条件が全て揃わなければなりません。このうち1)と2)は問題ないとしても、3)が最も厄介で、確実に屈折を正視にする方法はありません。LASIK後となると尚更です。よって、度数ずれが生じた場合の対策も合わせて考えておく必要があるのです。

 

度数ずれ対策の1)はタッチアップLASIKです。しかしながら、過去にすでにLASIKを受けていたり、もともと角膜が薄いなど、LASIKでの対応が困難な場合もあり、2)度数の異なるIOLに交換する追加手術が必要になることもあります。

 

いずれの方法にせよ、対応が可能という事実が大切です。術後の見え方に満足できなかったとしても、決して不安になったり諦めたりする必要はありません。

 

当院では術前から上記のことは詳しく説明しておりますが、それでも実際にタッチアップLASIKやIOL交換手術を行う機会もまた多いのです。

 

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