病期に応じた緑内障の治療

緑内障POG)の治療は実に多彩です。点眼薬にしても種類が豊富で、第一選択のプロスタグランジン製剤のほか、βブロッカー、α刺激薬、炭酸脱水素酵素阻害剤、副交感神経刺激薬などなど、書ききれないほどです。加えて、SLTやMPCPCなどレーザー治療があり、手術ではロトミー系だけでもマイクロフックロトミー、トラベクトーム、スーチャーリシス、アイステントなど。レクトミー系(濾過手術)でも通常のレクトミーのほか、エクスプレス、アーメドなどがあります。

 

実際の症例にどの方法で対処するかは、未だに確立した方程式があるわけではありません。例えば、点眼薬の第一選択は一応PG製剤となっていますが、一方でSLTレーザーで開始すべしとの意見もあります。しかし、いきなり観血手術を選択することはまずありません。緑内障の程度を視野の進行具合で判断し、初期、中期、後期、末期に分けるとすると、初期は点眼またはSLTの出番です。

 

今の点眼薬は眼圧下降効果が優れていますが副作用を無視できません。充血や色素沈着のみならず、長期、複数使用によるドライアイは視力低下の原因になりますし、眼球陥凹は手術の効果に影響いたします。また、さし忘れ、自己判断による中断も多く、点眼薬のみで治療を継続するのはかなり難しいことです。

 

SLTレーザーは副作用が少なく、効果が1年以上と長いのが特徴で、POG初期の治療法として優れています。SLTのみあるいはSLT+点眼薬1剤で多数の症例がコントロールできます。

 

緑内障の治療を受けている人が白内障手術を受ける機会があれば、その際はMIGS併用が望ましいです。アイステントは効果が確実で副作用が少ない利点があり、保険適用もされていますので、当院では積極的にお勧めしています。

 

中期〜後期になると点眼薬も多剤を長期に使用されているのに視野が進行するという事態が生じています。こうなると濾過手術(レクトミー)が必要になってきます。眼圧を大胆に下げるには濾過手術が一番です。

 

点眼、手術を繰り返し行い、もう手を尽くした結果ではあるが何とかしたいという場合、MPCPCの出番です。後〜末期のPOGや高齢で、濾過手術の負担に耐えられそうにない場合も適応です。

 

病期に応じてふさわしい方法を考えるのが緑内障の治療では必要になってきます。ただ、考え方は100人100様であり、未だに学術誌、学会でも統一見解はありません。

 

当院の方針をまとめると、点眼は適宜使用した上で、SLT→MIGS→レクトミー→MPCPCの順で加療するということになります。

 

POGの治療は長期にわたり根気強く行う必要があります。手術が繰り返されることになると、患者さんの精神面の支えも大切になってきます。しかも、医師は視野進行を遅らせるお手伝いをするにすぎません。患者も医師も、厳しい戦いになる覚悟を持たなくてはなりません。

 

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