IOL脱臼の手術

先日とある会合での講演のため、データを調べてみますと、昨年(2019年)1年間で眼内レンズの交換手術を34件行っており、そのうち23件と最も多かったのが、IOL脱臼に対する摘出、交換手術でした。

 

IOL脱臼とは、白内障手術で挿入されたIOLが元々の位置から外れ、硝子体腔へ脱落する状態のことです。高齢になってから手術された場合、余命と運動量の関係で、よほどのことがない限りIOLが落ちることはありませんが、元々IOLを支える「チン氏帯」が弱い場合、若年で白内障手術を受けた場合、外傷があった場合など、脱臼を起こすことがあります。

 

最も多いのは、「偽落屑症候群」pseudoexfoliation syndrom (PE) と呼ばれる病態で、チン氏帯の脆弱と緑内障を伴っており、しばしばIOL脱臼を来します。脱臼とともに急に眼圧が上がることもあります。

 

IOL脱臼を認めた場合、早期に再手術が必要です。脱臼したIOLを取り出し、新たに別のIOLを挿入します。

 

脱臼IOLの摘出、交換手術ではいろいろな方法があります。脱臼したIOLをそのまま(摘出せずに)強膜に縫い付ける方法もあります。IOLを摘出し、新たに挿入する場合でも、新しいIOLを縫い付けるか、強膜内固定するかのふた通りがあり、後者にも更にいろいろなバリエーションが報告されています。

 

それらの長短はここでは述べません。当院で行なっている方法は1)脱臼IOLを分割せずにひとかたまりで取り出し、2)専用のIOLを山根法で強膜内固定するという方法です。

 

この方法により、安全性、安定性が向上し、手術時間も短縮されましたので、患者さんにとってもメリットが大きいと思います。

 

IOL摘出、硝子体切除、再挿入の全てを行なって30分ほどで手術が終了します。

 

ST